帽子を被ったカラスがいました
大人っぽくて上品な 黒い帽子です
カラスはその帽子をとても気に入っていました
朝も夜も いつもその帽子を被っていました
太陽が昇るころ 小鳥が歌いながら空で踊ります
でも カラスは頭から帽子が落ちてしまうので 一緒に踊りません
帽子を被ったまま踊るスズメもいました
スズメの帽子には紐が付いていて 帽子が落ちないように紐を首にひっかけていました
カラスは紐の付いている帽子は 子供っぽいような気がして嫌でした
カラスは踊りよりも その帽子が好きなのです
小猫がお昼寝を始めるころ カラスの仲間は街にご飯を食べに行きます
街のご飯は綺麗ではありません ほかの動物の食べ残しです
カラスは帽子が汚れないように ひとりで森の木の実を食べに行きます
カラスは 仲間と楽しく街のご飯を食べるより 綺麗な帽子を被っているほうが満足でした
山の木が赤く染まるころ
北風のなかでみんな恋の相手を探します
カラスは帽子が吹き飛ばされないように 家のなかでじっとしています
紐付き帽子のスズメは帽子を被るのをやめました 今は奥さんが大切です
カラスには帽子を被らないで暮らすなんて嫌でした
カラスは帽子に夢中です
池がカチカチに凍るころ カラスは家のなかでひとりぼっちでした
帽子が濡れたら嫌なので 雪の降る日は外に出かけません
カラスの頭は帽子のおかげでポカポカです
カラスは一生帽子を被っていたいと思いました
カラスはまだ 帽子を被っています