彼は当然疑問に思いこう言った。
「お前は戦わないのか。」
個体が優しい口調で話し出す。
「あとで戦いますよ。先に戦闘を行ってしまうと片方は確実に死んでしまい会話が成立しなくなってしまうではないですか。簡単な話です。」
彼は変に納得し、自分が抱く疑問を聞くことに決めた。
「ここはどこだ。なぜ戦わねばならぬ。」
「やはり、あなたもそれを聞きますか。」
個体が呟いた一言に彼の疑問はさらに増えた。
「まて、『あなたも』とは何だ。下で戦った奴らも同じ疑問を抱いていると言うことなのか。」
「いいえ、あなたのような思考をするのはあなたと、僕ら『人審士』だけですよ。あ、人審士が何かも分かりませんよね。順序よく説明しましょう。まずここは煉籠と言われる全十六階の塔。あなた達『挑戦者』の使命は『敵』をせん滅しながら最上階を目指すことです。階層は挑戦者達がバトルロワイアル形式で戦う『衆煉層』と我々『人審士』と1on1形式で戦う『臣羅層』とがあり、それらを交互にクリアしていくことになります。つまりここは臣羅層と言うことですね。」「何故戦わなければならない。」
話を聞いた上で彼が再度人審士に質問した。
「今それを言うことはできません。あえて言うなら、生きる為に。」
そう言って人審士は足元にある銃器を拾い上げ彼に銃口を向けた。明らかに空気が変わり、殺気がその部屋を支配した。彼はそれに答えるように長刀を構え、駆けだした。