なあ中島、覚えてるか?
僕らの、最後のステージをさ…。
「今日は、おれら『シマシマ』の最後の漫才でーす!」
大きなホールで、お客さんの拍手が僕らに降り注いだ。
あの日は、僕と中島の最後の漫才をやった。
「おれ、もうすぐ天使になりまーす」
中島ったら、無理に明るくしてた。
「なあ嶋田、おれ、生まれ変わったら、ここにいるお客さんになりたいんだ」
「いきなりなんだよ!意味わからんし」
僕のツッコミ、ちょっと切れが悪かったかな?
「だって、『シマシマ』の漫才を生で見れるじゃん」
「どんだけ自分らの漫才気に入ってんだよ」
漫才が始まって5分くらいだったかな。
僕らの、本当の漫才が始まったんだ。
「おれ、今から天国行くわ」
中島が手で銃をつくって、自分の頭に向けた。
「いっちまうんかい!」
そして僕は、このツッコミを繰り返す。
「いっちまうんかい!」
1文字1文字に、心を込めた。
ついつい、涙が出ちゃうんだなあ。
中島がもうすぐ、本当に逝っちゃうことを考えると…。
僕の心のコップから、悲しい気持ちが溢れ出したんだ。
僕のは特別大きいから、今までずっとこぼさずに耐えてこられた。
でも、もう無理。
ずっと気持ちをためてきた分、たくさん溢れ出した。
溢れ出した悲しい気持ちが、全部涙に変わってさ、
滝が2つ、僕の顔に現れた。
「いっちまうんかい!」
中島は、黙って僕につっこまれていて。
それを続ける僕らを、お客さんは冷たい目で見ていたんだろうな。
ー続くー