「休むな、まだ30秒もあるぞ!」
ジム内に怒鳴り声が響く。
彼はこのジムの会長、矢野源治、プロを引退して15年間ボクサーの育成に心血を注いでいる。
ビーッ!
ブザー音が鳴り、ミットを叩いていたこのジムのプロボクサー翔太は手を止めた。
「よし、終了だ。1分休んだらロード行ってこい。」翔太はグローブを外し肩で息をしながら頷いた。
スウェットと呼吸を整え身体を伸ばすと外に出て走り出した。
土手に沿って走り公園に差し掛かった所だった。
公園で4人ほどの学生服を着た男が小さなブレザーの男に迫っている。
その中でも一際背の高い男がブレザーの男の襟を掴んだ。
その時だった。
ブレザーの男の左腕が大男の頬を捉え、巨体が弾けるように宙を舞った。
「え?」
翔太は目を奪われていた。「こいつは一体・・・」
これが翔太と後に殴り屋龍神と呼ばれる男、黒岩龍神との出会いだった