午後7時を回った頃、突然花火が上がった。
「わあっ、花火だ!」
空と早織は、歓声を上げた。
4人が中央広場の方を見ると、ファイアーストームに火が放たれ、大きな炎が上がった。
「あっ、何かが始まるんじゃない?」妙子が言うと、フォークダンスの音楽が、流れて来た。
「お母さん、行って来ようよ!」早織が言うと「そうだね、空ちゃんも行く?」
「うん、行く!行く!お父さんは?」
「お父さんは、疲れたから、留守番をしてるよ。3人で、行っておいで」
純子たちも、中央広場へ向かったが、海人が残っているのを見掛けた純子は、3人に「先に行ってて」と言って、海人の側へやって来た。
「矢口さんは、行かないんですか?」
「あぁ、先生。ちょっと疲れましてね、留守番です」
「そうですか、私も休ませてもらって、良いですか?」
「あぁ、良いですよ」海人は、そう言うと、一つの椅子を純子に勧めた。
「私たちは、変な組み合わせに見えるでしょう?」
海人は、聞かれる前にと思い、自分から話を切り出した。
「えっ?何の事ですか?」
「父親と母親の、片親同士の親子が、一緒に居るなんて!」
「ええ、まあ。私はだいたいの状況を聞いてますが、友達は、何も知らないものですから、変な想像をしてしまって……。すいません!」
「いえ、謝る事なんてないですよ!」
海人は、菜緒と妙子が親友同士で、毎年一緒に旅行をしていた事。そして、自分と妙子が、桜町小学校の1年生からの、同級生だった、と言う事を説明した」
すると純子は、驚いて言った。
「えっ!矢口さんは、桜町小学校の、出身だったんですか?」
「ええ、そうですよ。空の先輩です!」
「えっ?矢口さんは、3年前に転勤で、桜町に来たって聞きましたけど」
「えっ?誰がそんな事を、言ったんですか?」
「4月に、家庭訪問をした時に、空ちゃんのおばあちゃんが言ってましたよ!」
海人は『ピーン』と来た。母親の富子が、変な気を使ったんだ!それも、妙子が『純子が同級生かも知れない』と言う情報を持って来たから、その接点を否定するためだ!
「先生は、もしかすると、桜町小学校に、1年生の時に居ました?」
「ええ、そうなんですよ。それで『海人』さんと、言う名前に聞き覚えが有ったので、聞きましたら、別人じゃないかって!」