9月8日
小さな村で 一人の子供が生まれた
世から祝福され 皆からうとまれる子供が‥
「こっちだー!!」
寝待月が輝く澄んだ夜にサイレンと赤い無数の光無数の警官の声。
それはマンハッタンの中心にあるドルス美術館でおきていた。
「奴はどこに逃げた!」
「はっ!マルカス警部!!美術館の全出入口と思われる場所はすべて包囲しました。残るは屋上のみかとっ!」
「よし!奴を追い込むんだ!!」
「はっ!!」
警官隊の波が、一気に屋上に流れ込んでいく。
月の光をかき消すほどのライトの光が辺りを照らす。そこに一人の青年が立っていた。
銀色の短髪に深くかぶったキャスケット、夜風になびくロングコート。けして長身ではない華奢な体つき。手には布に包まれたドルス美術館1番の名画”赤い晩餐”を握りしめていた。
「もう逃げ場はないぞ!観念しろ”マリア”!」
じりじり青年を取り囲んでいく、マルカス警部と警官隊。
うつむく青年の口元がニヤリと笑った。その瞬間、手に持っていた名画を空高く投げた。
「なっ…なにを!国宝吸の名画だぞ!!」
警官隊が名画に気をとられている隙に、青年はヒラリと屋上から飛び降りた。
「川だ!裏に流れる川から奴は逃げるきだ!下の船上隊に連絡をしろっ!」
屋上から身を乗り出しマルカス警部が叫ぶ
「はっ!‥あっ‥あれ?」
「どうした?」
「む‥無線が通じません!」
「なんだと〜〜〜!!」
ダン!!
「なぜだ!!なぜ50名の警官隊が居ながら、たった一人のこそ泥を捕まえることができん!!」
黒い髭を八の字に生やした、少し小さく、すこし太った男が声を荒立て机を叩く。
机の上にあるプレートには”ミクロス・カーター警視”と書かれてある。
つづく