「今日も疲れたー」
野球の練習を終え、自宅へとペダルをこぐこの少年、将来は大学で教員免許を取得し、高校野球の指導者を目指している高校1年生だ。
帰り道の退屈しのぎに歌を口ずさんでいると、自転車のライトの照らす先に人影らしきものを見つけた。
「誰だ!?こんな時間にこんなとこいんの。」
人影との距離が10?ほどになったところで、どうやらブレザーの制服を着た高校生だと少年は気づいた。
キィィーー
ズサーッ
少年はブレーキをかけ、自転車のハンドルを左に切って止まると開口一番
「もしかして隼人じゃね?」
うずくまっていた人影も自転車の音と人の気配に気づき、ゆっくりと顔を上げる。
自転車を降りた少年が念のため携帯のサーチライトで照らすと思った通り、その人物だった。
隼人「あぁもしかして…
正太??」
隼人に声をかけたのは幼なじみの鈴木正太。
中学時代に隼人とバッテリーを組み、時にはゲキ、時には冗談を飛ばしマウンドの隼人を盛り立てた。
二人が顔を合わすのは中学の卒業式以来、2ヶ月ぶりだ。
正太「お前こんなとこで何やってんだよ。」
隼人「あー今気づいたらここにいた。。」
正太「何だよそれ。でも、もしかしたら隼人かと思って声かけてみたんだよ。俺ら小さい頃よくここで遊んだもんなぁ。向こう岸まで石投げて届くかとか。」
小さい頃、川沿いのこの辺りでよく遊んだ二人は久しぶりの再会ということもあり、思い出話が進んだ。
正太「懐かしいな。あっそれより隼人、高校入ってから野球やってんのか?お前携帯持ってないから連絡取りようなくてさ。」
隼人「色々あるけど、やってるぜぇ 今日はサボっちまったけど。」
隼人は高校に入ってから仁藤に球を受けてもらい、入部を認めてもらったことや青山に出会ったこと、そして秋吉に条件付きで監督を引き受けてもらうことなどを話した。
正太「そっか何とかやってんだー。テストで点取らなきゃいけないならウチ来いよ。勉強教えてやっから!」
二人はコンビニに寄り、問題集のプリントをコピーするがてら買った菓子パンを頬張りながら正太の家へと向かった。