中学校の始業式。
転入生がやってきた。
身長は私と同じ位で目の大きな
短髪の男の子。
顔を見ただけでは性格は全くわからない。
なんとなく不思議な雰囲気を
漂わせている。
『僕は猫田くろ(ねこた くろ)です。
よろしくお願いします。』
彼はそう挨拶をした。
『くろーよろしくなー』
クラスメートの一人が言った。
猫田君は嬉しそうに笑った。
その時の笑顔がやけに印象的だった。
『くろ』か…変わった名前だなぁ。
『神谷さん、これからよろしく』
ぼーっとしていた私に
突然彼が声をかけてきた。
『えぇっ!?なんで名前知ってんの?』
『先生がさっき言ってたよ』
『あぁそうなの…』
先生が猫田君を私の隣の席に
座らせたらしい。
その席は本当は不登校の上川の席だ。
彼と私は付き合っている。
だから本当は座らせたくない。
でもまぁしょうがない。
『神谷さん猫好き?』
『だーいすきだよ!』
私はホントにホントに猫が好き。
猫の話になると性格が変わるくらいだ。
『じゃあ僕は?』
『え?僕はってどういう意味?』
『僕、猫田っていう名前だけど』
『…でも猫田君は人間でしょ?』
『それは分からないけど…僕が
猫だったら好き?』
『…猫ならね』
『へぇーじゃあ付き合って』
何を言ってるんだ彼は。
転校初日から?
『…でも、私彼氏いるし』
『ここの席の上川でしょ?』
『…なんで知ってんの!?』
『見てたぁー*』
そう言って笑った彼の笑顔は
やっぱり印象的だ。
『見てた??』
『うん』
普通なら変だと思うだろう。
しかし私は猫田に惹かれてしまった。
放課後―――\r
また彼が話しかけてきた。
『一緒に帰ろ』
『いいよ♪』
私はあっさりOK。
だんだん上川がどーでもよくなってきた。
…どーせ不登校だし。
猫田について行った私は
いつも通らないような道を
たくさん歩いた。
『疲れた〜』
『じゃあ休憩しよう』
今は海が見える丘の上にいる。
夕日が綺麗だ。
私がぼーっとしてたら
猫田が私を抱き寄せて
キスしようとしてきた。
『待って!私彼氏いるの!』
やっぱり上川が気になった。
『じゃあなんでついて来たの』
突然猫田の口調が変わった。