あなたは
異常なもの、
常ならざるものを
どのようにして見分けますか?
人は他人を観察し
自分と比べることで
己が何者なのか知ろうとする。
だが、
「それ」には
同族と己を比べ、
己が《常識の中の存在》なのか知るすべは
なかった。
もし、
同族ならざる我々人間が「それ」を見、
一言で表そうと試みた
ものならば
「それ」は異常、異形の存在であった、と
そう称したであろう
「ウウッ! グッッ
グッアアッ!
ブッハァ! ハァハァ
アァ?
あっ、またあの夢か…」
いつもの部屋、
いつものベッドの上で
毎日目にする天井を
見つめ、青年は目覚めた。幾分息を荒げ、辺りを見渡し、いつもと変わりない自分の部屋だと分かると、ほっとし、またイライラしながらつぶやく。
「クッソ!
ここんとこ毎日だ、
同じ夢を…」
青年は汗まみれの額を手の甲で拭い、
ベッドの脇においてあるペットボトルから、お茶を一口飲んで、ようやく落ち着いた。
(なんでこう嫌な夢を…)
青年はもう一口お茶を飲んでから思い出してみた。
(今日は何だかいつもより覚えてる…)
暗闇のなかに「それ」はうずくまって‐いるように感じた。‐かすかな声でつぶやいていた。
『俺ハだレダッ…!』
「それ」はまさしく異形の存在であった。
今まで見たことも、
いや、《想像の及ばぬ範囲にある》ものであり、夢のなかで相対した瞬間に、人間の持てる全ての危険を感知する能力が、警告を発した。
そこまで思いかえしたところで、青年はブルッと身を震わした。
(汗かいて冷えちまったかな…)
傍らに置いてある時計に目を向ける。
午前3時ジャスト
(そろそろ寝とかないと明日がつらい…)
青年は布団をかぶると、今度は夢を見ずに
心地良い眠りに堕ちた。