中学時代に続けていたタダシのテニス部で築いた手首のスナップが効いたのか、銀色のヘラは丸く仕上がった食べ物を下から空中に持ち上げ
空を裂くように内側に回転させた
香ばしいお好み焼きの匂いが一面に広がる
『タダシ〜』
俺は甘えた声をだした
良からぬ不安を感じたタダシはぎこちなく返事をだす
『な、何だよ』
『俺しばらく彼女いないじゃん?
だからあ…女紹介してよッ!ほらっバイト先に女子校生入って来たって言ったじゃん!その子の友達でいいから今聞いてみてよ』
俺は本気で言った
俺の予定ではガードの堅いアイツに『OK』と言わせるまでに数時間はかかるだろうと思ったが、その場のノリで即OKをもらえた
FOMAの黒い携帯を取り出し早速その女子校生にメールを送っている
すぐ返ってきた
【大丈夫ですよ】
アドレスも一緒に添付されてきた
『タダシありがと』
『飯おごれよ』
『あはは』
俺の新しい生活が始まろうとしている