「・・・パール?」
タクトが拍子抜けした声を出した。
「へぇ〜この子の名前パールってんだ」
少女は自分自身の腕を空に透かすように見つめた。
「お前、パールじゃねぇんだろ?誰だ」
ウェドがどすのきいた声で少女を問い質した。
「あたしの名前は『ダイヤ』この村の住人なの。あなたたちは?」
ダイヤは微笑を浮かべながら試すような口調で訊いてきた。
「僕の名前はタクト。あっちからフラット」
フラットは軽く会釈した。
「そして、ウェド」
ウェドは無反応だった。
「この子もあなたたちの仲間?」
ダイヤは自分の背中を見ようとしながら、続けて訊いた。
「ああ、その子はパールだけど、パールは今どこに居るんだい?君の仕業なんだろ?」
タクトは少し口調を強くした。
「この子の中身はあの宮殿に閉じ込めておいた・・・ふふふっ、やっぱりあたしの思った通り、この体とっても動きやすいわ」
ダイヤは遥か遠くに建つ宮殿を指さし、くるりと一回転してみせた。
「あれは鏡の宮殿ですか?」
ダイヤは驚いた顔を見せた。
「すごーい。よく知ってるわね。あっ!そうだ、おもしろいものみせてあげる」
ダイヤが指をひとつ鳴らすとダイヤのすぐ横にダイヤの背丈よりも少し高い程度の鏡が出現した。
「あたしの力を見せてあげる」
そう言うとダイヤは鏡の中へ入っていった。
「どうなってるんだ?」
タクトが鏡を覗き込むと、自分の姿とそこにはいないはずのダイヤの姿が鏡の中の自分のすぐ隣にあった。
タクトが不思議そうにダイヤがいるべき場所に目をやったがそこにダイヤの姿はなかった。
「現実の世界に姿はなくても、鏡の中にあたしはちゃんといるよ」
「これは不思議な力ですね・・・」
「この鏡、割られたらどうなんだ?」
ウェドの質問にダイヤは平然と答えた。
「・・・そうね。そういう時はこうする」
鏡から少し離れた場所に新たな鏡が出現し、鏡の中のダイヤの姿は消えた。
「こっちよー」
声のする方を見ると新たに出現した鏡の中にダイヤの姿はあった。
「鏡から鏡へ移動して割られる前に逃げるとか・・・」
ダイヤは今度はウェドの背丈の三倍はある六つの鏡を三人の周りに出現させ、三人を閉じ込めてしまった。
「なんのまねだ!」
「鏡の世界の中に閉じ込めて動けなくしちゃうとか・・・」