ここは、ドルス美術館から少し東に離れた警察署
周りが緑で囲まれていて、市民公園と繋がっている。
公園では”天気のいい昼下がりを公園で過ごす”といった、大人や子供達で賑わっていた。
「しかし、あの状況において、名画と犯人どっちを優先と考えると、やはり名画のほうが‥」
「言い訳など聞きたくない!!」
ダン!!
机の上にあった本と資料の山がなだれ落ちた。
床に散らばった本と資料を慌てて拾うマルカス警部。それを見て少し落ち着いたのか軽くため息をつき、後ろの椅子へ腰を下ろした。
「‥しかし今回の奴の目的は何だったんだ。あれほどの警備をいとも簡単に突破して、肝心の名画を置いていくとは‥」
”キィ〜‥” と椅子が鳴る。
「奴自体、まだまだ解らない事が多すぎまして‥この資料によると美しい女性だったり、体格のいい男性だったり、はたまた老人だったりと、色々姿で現れるといいます。一人なのか複数なのか‥」
整理していた資料を読みながらマルカス警部は言った。
「今解ってる事は、数件の美術品と財閥令嬢の開発したデータの窃盗、隣国の王子誘拐、ダクチアの街で起きた娼婦殺人事件‥いずれも今回目撃されたキャスケットをかぶった人物が目撃されている」
八の字の髭をなでながらミクロス警視が言った。
「‥あと解ってる事と言ったら‥」
少しの沈黙が流れマルカス警部が口を開いた。
「…マリア?」
「‥ああ。奴は聖母マリアに関するものの前に現れる」
赤茶け、過密する住宅地。夫婦喧嘩なのか怒鳴る女の声とガラスの割れる音。泣き叫ぶ子供の声。遠くから聞こえるサイレンの音。
ここは世界中のどこの都市にも在るといわれるスラム街。
その一角にある古いアパートに青年は居た。
つづく