翌日
第十一区間役所
「あ〜暇だぁ〜」
役所と言ってもこの世界でいう役所は少々変わった形を取っており留置所や裁判所、区間警備隊本部の働きも兼ねていた。さらにいえば、ここ第十一区間の役所には送還装置もあり、ある程度の範囲から数名がここへ搬送されてくることがある。
「暇だ、暇だ暇だ、暇だ暇だ暇だぁ〜」
ダラードはここの留置所に入れられた。この展開はダラードとしても予想できていたのでその辺りにいる男に知り合いの解体屋であるエルドへ連絡させておいた。
しかし、さすがの彼にも予想できていない事態が起こっていた。それは
「なあ、なあ、兄ちゃん。なんかねぇのか?なんか」
ここはあまりにも何も無いということである。まあ、当然といえば当然なのだが、彼の予想では他にも捕まった者がいるはずだった。そんな彼の期待を裏切るように、彼は特別留置室なるところへ入れられてしまった。
「バーカ、なんもねぇよ」
返事をしたのは先日彼を捕まえる時にいたリクトである。
彼は降伏宣言をうけすぐにここへ連れて来たのだが、ゲルドは他にも仕事が出来たらしくそちらへ向かい、結局残った彼が監視を任されたのだ。
「おいおい、バカ呼ばわりは酷いだろ?こう見えて学校では結構頭がよかったんだぜ?」
「それなのに今は大量殺人犯じゃねぇか」
「いや、違う」
「何が違う?」
リクトの疑問にダラードは自信満々に答える。
「頭がいいからこそ稼ぎやすい職業に就いたんだ」
(ああ、こいつ本物のバカだ)
「・・・本気で言ってるなら是非とも脳内外科に手術を申し込んで欲しいな」
「残念ながら俺は怪我ぐらい自分で治せる」
もう何もいうことは無いと首を振りながらリクトは時計を見る。
(ちっ、まだ朝かよ)
ダラードに判決が下るのは明日の朝。後一日残していると思っただけで一気にやる気が失せてしまった。