こうしている間に、
1人、また1人と追い抜かれ、
あたしは遂に5人全員に追い抜かれてしまった。
もう少しで完走出来るはずだったのに。
みんな、ごめん!!
立てなくて恥ずかしいのと、
完走出来ない悔しさで、
あたしは動揺していた。
じわっっ‥‥。
やだ、涙が。
とりあえず、立たなきゃ‥‥。
そう思ったそのトキ、
座り込んだままの、あたしの背後から、手が差し伸べられた。
『ほらっっ。バトン貸せ。』
えっっ?!
ま、聖人???
なんで???
今日は休みだったんじゃ‥‥???
『秋田谷ァ―!!
奈央頼む!!』
聖人は、赤組の応援席にいるユカに、そう叫ぶと、
あたしからバトンを取り、
残り約100mの距離を走り出した。
“おい、あれ北岡だろ?!バカかアイツ。もう残り100mだろ?!
100mじゃ、アンカーに繋げるコト位しか出来ねぇじゃん。”
“北岡が木下の走る分、残り100mを走ったって、残るアンカー1人で全員を抜いて、またトップに躍り出るコトは無理だろうに。
と言うコトは、走るだけ無駄な抵抗だってコトだろ?!”
“体育祭を今年もスルーしたヤツが、自分の女の前だからって何カッコつけてんのヨ?!
ケッ。カッコつけてんじゃねーよッ!!”
数々の罵声が飛び交う中、
ユカが息せききって、あたしのもとへ走って来てくれた。