浩紀は教室に戻るまでの間も、何かぼーっとしているようだった。
いつも、多弁とまではいかないが、たわいもない話ぐらいはする。
だが今日は昌也の話に短い相槌を打つだけである。
「浩紀、お前なんかあったのか。」
やはり、黙ったままだ。
昌也はそっとしておこうと思った。
話たくないことなのだろう。
「…昌也」
浩紀は小さい声で昌也を呼んだ。
「今日の放課後、暇か。話たいことがある。」
「ああ、暇だよ。わかった、放課後な。」
浩紀が悩むのを見るのが初めてなので、昌也は少し心配になった。
放課後まではまだ時間があった。