―四歳、春
〜運命〜
「ゆきのぶにいちゃん、一緒にあそぼ!」
あの頃から私は幸信と遊ぼうと毎日毎日大きな声で誘っていた。
「かなん、おれ、今年から小学生なんだぜ??小学生は休みの日だっていそがしいんだよ。」
私 笹川夏南と、この、今年から小学生になって少し浮かれている少年 織田幸信は私が生まれた時からお隣さんだった。
「ねぇ、ショーガッコーって楽しい??」
「おう。ひらがなをならうんだよ。」
「い〜な〜…かなんも行きたいな〜…」
「ヘヘッいいだろ!!」
私が四歳になった時、幸信は七歳で、その頃遊びにいくといつも学校の話を聞かされていた。
私はそれが羨ましくて仕方なかった。
「…かなん、おじゃま虫なの???」
「何いってんだよ。遊びに行くんだろ?」
「…うんッ!!!こうえんに行こう!!!」
忙しいといいつついつも遊んでくれてたよね。
でも、知ってたよ。
毎日塾や習い事をいっぱいしてたよね。
私は小さい子なりに大変っていうのを読み取ってたんだよ。
大変っていうの知ってるけど、いつも甘えちゃうんだよね。
そんなある日だった。
その日私の両親は夫婦二人で旅行に行ってて私は幸信の家に預けられていた。そしていつも通り幸信と私は遊んでいた。
遊び終わって幸信の家に帰ると、なにやら様子がおかしかった。
どうしたの?と聞くと、幸信の母さんはそっと私の肩に手をおき、目の高さを合わせるようにしゃがんだ。
「あのね、夏南ちゃん…お父さんとお母さんが…事故で天国に逝っちゃったんだ…」
突然、そう言われた
次の日、父と母の葬式が行われた…
涙はでなかった。その頃は天国は何か分からなかったから。
何がどうなってるかなんて分からなかったけど、あの時の事は忘れていない。
数日後、親族のいない私は幸信の家に引き取られることになった。
ぼんやりと暖かい春の日差しにあたっていた。その隣に幸信がそっと座った。
幸信はそっと口を開いた。
「悲しくないのか??」
私はこのぼんやりとする気持ちが何物かわかっていなかった
かな…しい??
そっか、かなしいんだ…
そう思うと突然涙が溢れた。
その様子を見て幸信は焦ったように言った。
「大丈夫!俺がもうかなしくさせないよ」
そう言われたら安心してまた涙がでた。
涙でよく見えなかったけど、幸信の目にも涙が浮かんでいるように見えた。