練習風景を見て
これならおれにも…
という思いと、片波さんの笑顔に押され
「あ、はい」
前向きな返事をした
「では後ろにならんでくださいね」
片波さんに指示され、1番後ろに立った
「構えっ」
大きな声とともにみんなが構える
見様見真似でやってみた
号令がかかる。合わせてパンチをうつ
「楽勝だ」
根拠のない自信がでてきた
10回…20回…30回
いつ終わるんだこれ…
50回で終わった
「次は足技」
大きな声で号令がかかる
まってくれ…息が…なんか腕がおかしい…
容赦なく稽古は進む
終わったころには、腕も足も感覚がなかった
息もつらい。頭がくらくらする。見るものが白がかって見える
死ぬんじゃないか…おれ…
すると、片波さんが
「唇が紫になってますね。酸欠ですね」
ニコッと言ってきた
酸欠!? 重病じゃ!?
余計に気が遠くなった
他のみんなは笑っていた
「若いのに情けないの〜」
「初めてですから」
話が聞こえてきたが、酸欠で耳がよく聞こえない
女の子の笑い声もする
「それじゃ今から組手するので見学しててください」
片波さんがニコッと言う
組手? ああ、寸止めとかいうのオリンピックで見た記憶が…
「礼。はじめっ」
片波さんの声が響きわたった
おれは目を疑った
バシッ ドンッ ガキッ
…殴ってる…
齢50くらいの人達が
乙女と言われる齢くらいの女の子が
殴りあってる
その非日常的な出来事に
おれは酸欠の苦しさも忘れ
ただ呆然と目を奪われていた