先輩と……(3)

アイアンマン  2009-02-21投稿
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一年前の僕は大学に入りたてで、そしてその大学にも絶望していた。
一浪してまで入る様な大学ではないクソ大学。
僕の哀れな自尊心はボロボロに打ち砕かれていたが、これは本当の自分ではないと自分に言い聞かせていた。
回りの下衆な笑い声を放つ輩に埋もれながら、世間的には僕もこいつらと同類なんだと常に意識させられた。
屈辱だった。
それを忘れようとして自分をだまし続けた。
うすうす気付いていた。
僕は天才じゃないって。
でも認めたくなかった。
認めたらそこで終わりだと思った。
もしかしたら既に終わっていたのかもしれない。

K先輩と出会ったのはそれから一年後のことだ。
レジ専だった僕はようやく担当のジャンルを持たせてもらえた。
そこにいたのがK先輩だった。
いかにも今風な女性だった彼女を僕は初め物凄く警戒していた。
対人恐怖症ではないが、大勢の中に溶け込もうとすると僕は擬態してしまう。
二重人格を産み出すのと同じ原理で僕はバイト先でのキリを演じていた。
霧島実篤ではない、少し出来の悪い皆から愛され、可愛がられようとする惨めなキリを。


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