『結婚されてるのにこんなのマズイです』
その言葉を言った後
不意に涙が込み上げた
思わず泣いてしまった
それは自分へと向けられた言葉でもあったから
此処で貴方を想ってしまったから
貴方ならいい
抱き締めてくれているのが貴方なら
そう思うと涙が止まらなくなった
泣いている私に気付き彼が体を離す
顔に触れキスをされそうになった
完全に勘違いをされた
私がこの人を好きなのにどうしようも出来ない苦しみに堪えているとでも思ったのだろうか
貴方に会いたい
それだけしかなくなった
相変わらず涙は止まらない
『そうじゃなくて』と彼の体から擦り抜け頭を振った
後ろめたそうに部屋を出て行く
解放と苦しみでその場に泣き崩れた
やっと一人になった
彼には悪い事をした
次職場で会ったらどんな顔をすればいいのか
複雑な思いでただぼんやりと部屋の天井を眺めた
自分が言った言葉をまた思い出す
貴方を好きになった私も一緒
だけどこうして誰かを目の前にして再確認してしまう
やっぱり貴方じゃないと駄目なんだって