「飛び下りるまでは、自分に酷い事をした人達の顔が頭に思いうかんで、怒り、恐怖、不安が頭を埋め尽くすんです。」
また、少年が口を開く。
今度は少女は何も言わなかった。
少年の言っている事が、当たっていたからである。
確かに、さっきまでの自分もそうだった。
少年が続ける。
「それで、飛んだ瞬間に、あれ?何やってんだろ?って思うんです。体に風をあびながら、別に死ぬ事もなかったなって。」
少女は黙って話を聞いているつもりだったが、少年があまりにも不自然な言い方をするので、思わず
「何でそんなことがわかるの!?飛び下りたことも無いくせに!」とまた、叫んだ。
少年は一言だけ言った。
「僕、左手で触れた物の過去を、見る事が出来るんです。」
続く