店は小さなケーキ屋さんで、奥に買ったケーキを食べられるスペースになっている。
あたしは先に注文して席につく。
窓の外からはきれいに整えられた花壇が見えて、その景色を眺めてぼーっとしていた。
「彼と、何かあった?」
覗きこまれる。
「いや、彼っていうか、彼っていってもあの人は彼女いるわけで、付き合ってるって訳でもなく…」
しどろもどろになっているとケーキがきて話が中断される。
コーヒーにミルフィーユ。
それと紅茶に、苺の乗ったケーキ。
チーズケーキ、ガトーショコラ、オレンジのタルト
小さな木のテーブルは計5つのケーキで一杯になった。
ケーキ多すぎないか?
唖然としているあたしの前で、苺にフォークを突き刺しながら成田くんは平然と言った。
「信じらんない!」
確かにこの量は。
「付き合ってるんだと思ってた。」
あぁ、そっちか。
4口で食べ終え、次のケーキを食べ始めるのを目にすると、信じられないのはこっちだ、という気分になる。
「あの人…はね、彼女と同棲してるんだし、あたしとは、ただの、遊びなんだよ。」
ミルフィーユにフォークを突き刺すと、サクサクと崩れ落ちて、白い皿に散らばった。