「僕も分からないな」
深く息を吐きながら
呟いたヒカル
「何が分からないの?」
互いに見つめ合って
あぁ本当にヒカルは
とても優しい顔をしてる
「カナみたいな素敵な女性を悩ませるなんて」
その男の気が知れない
いきなり
「は…どうしたの?ヒカル」
おかしなこと言うから
ちょっとドキリとした
「その言葉、アイツに言ってやってよ」
「それもそうだな…」
なんて互いに笑う
分かってる
ヒカルはヒカルなりに
あたしを
励まそうとしてくれてるんだ
「ありがとう」
ヒカルの優しさに触れて
少し元気になれた気がした
「…ねぇ、カナ?」
「んー?」
「彼じゃなきゃダメなの?」
「…え?」
なに、また掘り返すの?
「カナにはもっとイイ人が居るよ」
「そうかなぁ…」
どうしたんだろう…
こんなこと言うなんて
今日のヒカルは
なんか…らしくない、
「僕じゃダメかな?」
「は?」
何を言い出すの
「あたし彼と別れる気ない」
なんだかんだ言っても
彼のことが好きなのだから
「僕はそれでも構わないよ」
「本気で言ってるの?」
え…?ヒカルって
こんなヤツだっけ?
「僕が冗談で、こんなこと言うと思う?」
いや、思わないけど…
でもそれって、
「浮気だよ」
ヒカルの目を
真っ直ぐ見つめて
その目に
迷いは見えない気がしたけど
カナが良ければ
それでもイイんだよ
「僕はそれ程、キミが好き」
深とした空間に溶けた言葉は
少しだけ、
あたしの心を揺らして
大きなシコリを残した
「見誤らないで」
「そうかな?」
「……責任、取ってよ」
「いくらでも取るさ」
優しい言葉に突き動かされ
寂しいだけの気持ちを
埋めるには
誰を頼ればイイの?
浮つく心を抑えられないのは
ただ単に寂しいからで、貴方を愛してるわけじゃない
end*