子供の頃、家に帰っても
誰もいなかった。
私は、それがとても淋し
かった。
学校での出来事を母に聞
いて欲しかった。
楽しい話をして笑い合っ
たり、真剣に相談をした
り、一緒にお出掛けをし
たりしたかった。
しかし、その願いは全て
叶わなかった。
“一家団欒”なんて言葉
とは一切縁の無い家庭だ
った。
占い師は私に、
「あなた、家庭人として
の幸せが薄いの。
あなたは両親に愛されな
いで育った。
あなたの両親も両親に愛
されないで育ったの。
その前もずっとずっと親
から愛された人がいない
のよ。
愛を教えてもらえなかっ
たあなたは、人を愛する
ことができないの。
例え両親でさえ。」
と言った。
残念ながら、占い師の発
言は当たっていた。
私は、両親からの愛情を
少しも感じた事がない。
育てる事が出来ないのに
なぜ産んだのかと、いつ
も疑問に思っていた。
母方の祖母に会いに行っ
た時、祖母は散々母の事
を卑劣な言葉で罵ってい
た。
そして、母もそれなりの
理由があり、自分の両親
を嫌っている。
父親とは話をした記憶が
余りないが、全く家庭に
関心のない人だった…。
次の日、私は久し振りに
母に電話をかけた。
そして、子供の頃から聞
きたかった事を聞いた。
「何で、育てられもしな
いのに私を産んだの?」
母は、
「お母さんはお前に捨て
られたんだよ。
お前が小学校2年の時、
誉めたら怒られたんだ。
それから構うのは止めよ
うと思ったんだよ。
どんな子供が産まれるか
なんて、産んでみなきゃ
判らない。
お前は本当に育て難かっ
たよ!」と言った。
余りにも無責任すぎる発
言に何とも言い様のない
感情が湧き出てきた。
解りやすく言えば、
「お母さんがお前を愛さ
なかったのはお前のせい
だっ!」と言う訳だ。
悲しい事に、そんな事実
が存在してしまうのだ。
うちの家系では、親の愛
情は永遠ではない。
親が私にしたように、私
もいずれ、子供を愛さな
くなり、言葉で殴り、傷
つけ、自分を正当化する
日が来るのかと考えると
不安で不安でどうにもな
らない…。