キャロルの歌声を聞きながら古賀はそんな回想をしてしまう。それほど恵子との日々が眩しく感じるのは何故なのかと考えた。
まだ自分は何かふっ切れていないのか、その何かは考えなくも恵子に決まっている。
今彼女は何処でどのような生き方をしているのだろう。そんな疑問が古賀の脳裡を駆け巡った。
彼は今更どうしようもないことと思うといたたまれない気持ちになった。
それほどまで自分にとって恵子という女性は掛け替えのない存在だったのだと彼は胸が締め付けられた。
しかし、後に彼が思いもよらないことが現実になるとは、この時誰も知るよしはなかった。