「俺さ、ずっと自分はどっか壊れてるんだって思ってた。
どんな楽しい事をしているときでも、いつも心の何処かで人を憎んでて、何処かで人を恨んでたから」
大切な人が死んでから…大切な人を奪われてから…。
あの日からずっと…。
「…」
「だから、昨日あんな事聞かれたときも、『俺は十分壊れてるから、もうこれ以上壊れる事なんて出来ない』って思ってた。けどさ…」
歪んでいた建物が段々と元の形に戻っていく。その建物からは今まで感じられなかったのが嘘と感じられるほどに人の気配が感じられた。
俺は右手を握りしめた。
「これ以上壊れる事が出来なくても…」
紋章がゆっくりと光だし同時に段々と周りの景色の色が統一されていく。
俺はその建物へと駆け出した。
「――狂う事は出来るんだね」
俺は武具を握りしめ、全てが赤く見える景色を見ながら建造物の中へと入っていった。
「――壊れた日常よりも狂わしき非日常を貴方は選ぶのですね。残ったものを捨てて…貴方はそちらへ行くんですね…。
…解っては、いました…。解っては…いました」
幸音はそう呟き建物から背を向けた。その建物はいつもと変わらず人の気配がなかった。
*