…煙草の煙が目にしみる。
しかめっ面なのはそのせいだけではないな。
アイツのせいだ。
…ため息混じりの煙は、ふわりと宙を漂っている。
そろそろ…かな。
すると見計らったかのように部屋のドアが勢い良くバタン!と開いた。
茜『行くわよ!!!!!』
…声がデカい。
どうやったらこんな早朝から頭に響くデカい声が出るんだか聞いてみたいもんだ。
茜『何ボーっとしてんの!?行くわよ!!』
…わかってる。
取り敢えず、煙草が吸い終わるまで待…
って!?おぃ!!
茜『そんなもの体に悪いだけよ!?今すぐやめなさい!!』
人がくわえてる煙草を横取りして揉み消しやがった。
…いつもそうだ。
マイペース、自分勝手、自己中心的…。
そんな表現を羅列すればキリがない。
不幸にも…茜とは幼なじみの関係で。
こんな茜に散々付き合わされて今に至るわけだが。
正に『腐れ縁』とは俺と茜の様な関係を言うんだろう…。
うん、そうだ。俺達は『腐れ縁』の模範的関係に違いない。
そんな事を考えながら1人でウンウンと頷いているのだが。
そんな事は構わず茜はグイグイと俺の上着の裾を物凄い形相と物凄い力で引っ張るので…。
不本意だが。
敢えて、もう一度言おう。
不本意だが!!
茜の買い物に強制連行されることに。
『ありがとう…。』
…ん?
何か聞こえたが…?
何か言ったか?
茜『何にも言ってないわよ!!』
だよなぁ。
『いつも…ありがとう。』
…確かに今、はっきり聞こえたぞ。
茜の声だ。
いや、正確に表現するならば。
その言葉は『音』として耳に入ってきているのではなく、直接頭の中に響いてくる『声』の様なものだった。
…なんなんだ。これは?
暫くして、その『声』の正体が『茜の心の声』だと言うことが判明する。
…なんで分かったかって?
それは。
茜が口にしていることと、頭に響いてくる『声』が…
全く正反対なものだったからだ。
茜は昔からそうだった。
…素直になれない。
典型的な、あまのじゃく。
要するに…
なぜか今、俺は茜の心の声が全て聞こえてしまっているのである。
『言わなくては…』
???
意味深な『声』が俺の頭の中に響きわたる…。
つづく…かなぁ?