僕は
見慣れた駅のホームにいた。
雨が降る音だけが僕の中に響いていた。
アスファルトの強い臭いがときどき漂い、僕の存在が確かにそこにあると云う。
むわんとする湿気の中、ただ呆然とホームに立ち尽くす。
その空間を突き破るようにホームにすざまじい音が鳴り響く。
特急列車が通過します。
そのアナウンスが合図だ。さぁ、ふみだせ。
入場券を握りしめ、僕は...
二度と戻ることのできない一歩を踏み出した。