欲張りになっている自分に私は怖かった。
だけどあの夜、私は尚ちゃんの孤独にやっと気が付いたよ。
そして尚ちゃんと一緒にいようと決めたんだ。
バイトが終わって尚ちゃんは喫煙所でタバコをすいながら私を待っていた。
小走りで駆け寄るといつもの笑顔で迎えてくれた。
「じゃ、いくか」
尚ちゃんはタバコを消して席をたった。私は黙って頷いた。
いつも周りが沢山いるから二人っきりってなんか緊張する。でも心はすごく穏やかで嬉しい。
お店に向かう途中で尚ちゃんの携帯がなる。
「なってるよ?」
「おん」
尚ちゃんはでようとしない。なんとなく彼女からの様な気がした。
お店は尚ちゃんがよくいくBARで小さいけど料理も美味しく、マスターが気さくないい人だった。
乾杯するとさっそく尚ちゃんは聞いてきた。
「なんか悩みごとか?」
私は意味ありげに笑って
「恋かな」
と答えた。尚ちゃんはタバコに火をつけて
「へぇ」
とだけ答えた。
自分の気持ち、見透かされているような気がした。
「もし、好きな人に彼女がいたらどうする?」
「俺は関係ない。だって好きなんだろ?」
そう言うと思った。
「好きな人に彼女いるの?」私は笑って頷いた。