この時…
「ウィアーンッ!
ウィアーンッ!
ミャミャーッ!
ミャミャーッ!」
車の中から子供の泣き声がして来た。
「おやおや? まだァ、中に1人残っていましたなァ?」
中を覗いてみる。
ハハァ、なるほど…
中で可愛い子供人形が1体、足をバタバタさせながら泣き喚いている。
どうやら、他のみんなに遅れてしまって1人、置いてぼりになったのかもしれない。
笑いながら、配達人はその子を抱き上げた。
「ウィアーンアーンアーンッ!! ウィアンッ!! ウィアンッ!! ウィアンッ!!」
顔をクシャクシャにして泣く泣く。
「まあ、イイ泣きっぷりだわ」
「名前はレレ。30体ある人形の中の、甘えっ子さんの1体ですよ」
「まあ、そう。可愛いわネェ」
「泣きっぷりがイイって事は、元気な証拠だと言う事ですネェ」
マルシアも配達人も思わず、ほがらかな気持ちになった。
「では奥様、私はこれで」
泣き虫レレをマルシアに託した配達人。
「ご苦労様」
「奥様がちゃんと、ママの所へ連れて行ってあげるから安心するんだよ」
配達人はそう話しかけて、レレの頭を撫でた。
後片付けを済ませた配達人は屋敷を後にした。