「ハイハイ、泣かない泣かない。今からママの所へ連れて行ってあげるわよォ」
人間の赤ん坊を扱うようなやり方で、…
レレをあやすマルシア。
しばらくすると…
レレは段々と、泣くのを止めた。
「ミャハハハ!」
マルシアに抱かれて気持ち良いのか…
レレは穏やかな表情を見せた。
笑顔がとても、ステキだ。
さっそく、レレをエルファのいる部屋に連れて行く。
人形部屋へ来ると、ドアを開け始めた。
アレ?
開かない!
何と、ドアの内側から施錠している!
夜の就寝の時以外は滅多に施錠しないのに何故だろう?
ドアをノックしてみる。
「エルファ、私よ!
ドアを開けてちょうだい!」
……
返済がない。
「エルファッ! エルファッ!」
返済がない。
もう1度、ドアをノックしてみる。
すると…
ドアが開いて、エルファが顔を見せた。
「…」
無表情でマルシアを見るエルファ。
「まあどうしたのォ?
カギなんか、かけちゃったりして」
「…」
何も、返事をしないエルファ。
「可愛い子ちゃん、1人忘れてるわよ」
マルシアは両手で持っているレレをエルファに見せた。
「ミャミャー」
レレはエルファに向かって両手を上げた。
レレを手にしたエルファはジッと、その子を見つめた。
部屋の中では、他の子供たちが楽しそうにハシャいでいるのが見える。
「サァ、この子もみんなの所へ連れて行ってあげなさい」
「…」
エルファはレレを足元に置いた。
そして…
ぐしゃあッ!!
部屋の中へ入ろうとしたレレを、上から足で踏み潰してしまった!
「エルファーッ!?」
悲鳴上げたマルシア。
エルファは何も言わず、冷たい表情で部屋の中へ入って行き…
ドアをバタンと閉めて中から又、カギをかけてしまった。
呆然と、その場に座り込んでしまったマルシア。
目の前には…
ペシャンコに潰れてしまったレレの変わり果てた姿があった。
「ぐちゅっ! みゃ…みゃ…!」
微かに動いている。
何て、惨い事を…
「こりゃあ、先が思いやられまんなァ?」
背後から男の声がした。
振り返ると、買い物さきから戻って来た使用人ジャックの姿があった。