ロストクロニクル7―12

五十嵐時  2009-02-27投稿
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「・・・分かったわ。でも、その代わりにお願いがあるの」
ダイヤもウェドたちに散々説得されてとうとう折れたようだ。
「なんだい?」
「それは鏡の宮殿に入ってから話したいの」

タクトたちはダイヤの案内で鏡の宮殿に向かっていた。
「あれ?あんなところに誰かいますよ。他にも人間がいたんですね」
遥か前方に馬車に乗っている男の姿があった。 「ああ、あれはクローブっていってこの辺りを中心に活動してる行商人なの」
そういうとダイヤは大声でクローブを呼び出した。
「大丈夫でしょうか・・・」
「大丈夫さ」
「クローブ!こっちよー」
「ああー?誰だ、お前ぇ!」
ダイヤは少し、訳が分からないといった表情をしたが、自分の姿を見て思い出したように取り繕った。
「あっ!違うのー」
馬車がスピードを上げてこちらに向かってきた。
もう馬車は目の前にまで来ていた。
「また、誰かの体を借りたのか?」
クローブとタクトの目が合った。
「誰だ?お前ぇ」
「あ、ああ、ぼくはタクト」
タクトは笑顔を作ったが、クローブは無表情のままだった。
「ごめんなさいね。クローブは行商人のくせに人との付き合い方がなってないの。でも、いつもはいい人なの」
「なんか見てくか?」
クローブは馬車を飛び降りると馬車の後ろに回り、荷台を開けた。
そのようすを見てタクトは、パールと出会った時のことを思い出した。
「なんでも選べ」
「そんなことより、クローブ、お願いがあるの」
「なんだ」
「鏡の宮殿まで乗せてってくれない?・・・ほら、ここからだと鏡の宮殿は遠いし・・・」
ダイヤは少し言い辛そうに頼んだ。
「俺は他人が苦手だ」
行商人とは思えない発言だった。
「そんなことくらい分かってる。じゃあ、わたしたちは後ろの荷台でじっとしてるから」
ダイヤは両手を合わせてクローブに懇願した。
「・・・分かった。その代わり後ろでじっとしてろよ。それに、狭いぞ」
クローブは後ろの荷台を整理し始めた。

「なんだよ!あいつ、つれねぇな。あれでも本当にパールとおんなじ行商人か?」
「打ち解けると悪い人じゃないんだけどなぁ」
馬車の中は狭く、窮屈だった。パールの馬車に乗ったことのあるタクトには、パールの馬車の方が広く感じられた。

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