尚ちゃんはずるい人。
わかっていていつも知らないふりをする。
尚ちゃんは優しい人。
でもそれは時として…罪。
私は尚ちゃんが私の気持ちに気付いている気がした。
「恋は辛いな」
そう切なく笑う横顔に、私は胸が苦しくなった。
また尚ちゃんの携帯が、震えている。
「彼女…からじゃないの?」
「違うよ、俺彼女いないし」
私は耳を疑った。
今、なんていった?
彼女いない?
どういうこと?
私はパニック寸前。
尚ちゃんは意地悪く
「噂、だろ?別れて3ヶ月以上たつんだけどな」
と、笑った。
そしてこう付け加えた。
「しばらくは誰とも付き合いたくないんだ」
私はあっけなく振られた。
「なんで?」
「リハビリが必要なの」
と、私のおでこに軽くデコピンをした。
それから何度聞いても、尚ちゃんは自分の話はしてくれなかった。
帰り道、二人とも酔っていた。
私がこけそうによろけると尚ちゃんは助けてくれた。
「あぶねっ」
「ごめん…」
自然と目が合って、尚ちゃんは私を抱きしめた。
私も抱きしめ返した。
月が優しく見ていた。
尚ちゃんは泣いていた様に私は感じた。
肩が少し震えていた。
私は包み込むようにただ抱きしめた。