賑やかな声は、部屋の外まで聞こえて来る。
「何なんだよありゃ?
さっきの態度と大違いじゃねえか」
ジャックは複雑な気持ちで立ち聞きしている。
電話をかけに行ったマルシアが戻って来た。
「中の様子はどう?」
「とても賑やかです」
「さっきの冷酷な態度とは、大違いなのネェ」
「人形協会は何て、言ってるんです?」
「エルファのようなタイプの人形は、自分の子供を守ろうとする強い母性反応が働くらしいわ。
特に、初めて子供を手にした頃は、周りへの警戒感が強くなって…
誰とも口をきかなくなるみたい」
「じゃあ、さっきの行為は何だったんです?
自分が守るべき我が子を、いとも簡単に踏み殺してしまった」
「子供を勝手に触られたって言う、怒りと警戒感の表れじゃないか?
協会の方はそう、見ているわネェ」
「だとしたら、子供たちには迂闊に触れませんネェ。注意しないと又、子供が殺されますぜ」
「大丈夫じゃないの?
長くても、1ヶ月ぐらい私たちが注意すれば。
そのうち段々と、向こうから心を開いてくれるらしいから」
「そう、なってくれたらイイんですけどネェ」
気持ちがスッキリしないジャック。
傍のテーブルの上には、踏み潰されたレレが白い布に包まれて置かれてあった。
既に…
息はしていない。
エルファママの愛に触れる事もなく…
他の子供たちと楽しく過ごす事もなく…
1人寂しく死んでしまったのだった。
可哀想に…