おじいちゃんの手

響音(おとね)  2009-03-01投稿
閲覧数[767] 良い投票[0] 悪い投票[0]

これは私がまだ中学に入学する前の話です。

大好きで、とても可愛がってくれていたおじいちゃんが亡くなりました。
そのお通夜での事です。

親戚が大勢集まり、おじいちゃんの遺体を前に、笑いながらお酒を飲んでいました。
今では、おじいちゃんの生前の話をしながら笑って送ってやろうとする親戚の気持ちが分かるのですが、当時の私はまだ幼くて…

おじいちゃんが死んだのに、何で楽しそうに笑ってお酒なんか飲んでるんだろうと…
ものすごく腹立たしかったんです。
それが我慢できなくなり、おじいちゃんの棺の前に立って、泣きながらそう怒鳴ってしまったんです。
親戚の人たちは驚いて私を見ていました。

その時ガタンと音がして、私はガッと足を掴まれたんです。
それは間違いなく、おじいちゃんの手でした。

あまりの驚きと恐怖に、思わず手を振り払ってしまいました。

気付いた時には、おじいちゃんは胸の前で手を組んだ元の姿に戻っていました。
しかし親戚じゅう皆、確かに私の足を掴むおじいちゃんの手を見ていました。


あとで親戚のおばさんに、
『嬉しかったんだろうね、おじいちゃん。あんたがあんな風に言ってくれて。それで思わず手が出ちゃったんだろうねぇ』
と笑って言われました。

本当のところはおじいちゃんにしか分かりませんが…
本当にそうだったら嬉しいな、と思ってます。

何十年後か、天国でおじいちゃんと会えた時には、この話をするつもりです。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 響音(おとね) 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ