初めてその手を見たのは、その場所で死亡轢き逃げ事故が起きた2日後だった。
青白い手が、曲がり角からおいでおいでしているように見える。
良くないものだというのはすぐに分かった。
気付かないふりをして、すぐ近くを通らないように道路の反対側に渡り、通り過ぎようとした。
見てはいけないと思ったのだが、ついチラッと視線を向けてしまった。
曲がり角には、女がうずくまるようにして座っていた。
そして、こちらをじっと見ている。しまったと思い、急いで視線を逸らすと
目の前に女がいた。
悲鳴も出ずに立ち尽くした。
白い手がゆらりと動いた。
おいで
頭を轢かれたのか、頭部はかろうじて原型を留める程度だった。
おいで
その顔が、
笑った。
おいで
最後に見た光景は、猛スピードでこちらへ突っ込んでくるトラックの影だった。