神の教えを説いている自分自身、おぼろげにしか神の姿を見る事ができなかったからだ。
「‥私の‥私の信じる神の姿‥」
「こ〜ら、子供達よ!もうすぐ日が暮れるよ。もう家に帰んな〜!!」
扉の無い入り口から、杖を突いた老婆が現れた。
「あ〜、ゲン婆だ〜」
子供達がゲン婆と呼ばれる老婆に駆け寄った。クロムも立ち上がりそこへ向かう。
「あんたかい、子供達が言っていた神父様っていうのは」
「すみません。こんな時間まで子供達を引き止めてしまって」
「いいや〜、むしろ感謝しているんだよ〜。字も読めず、まともな教育を受ける事の出来ないこの子達を、普通の子の様に接してくれる、あんたに」
そう言って、子供の頭を強くなでた。
「そ〜だ!あんたに美味しい林檎を持ってきたんだった‥あ〜れ?置いてきちまった!ちょっと待っていておくれよ!」
クロムが止めるのを聞かず”あらあら”といいながら杖を鳴らし早歩きで教会から出て行った。
「ごめんねクロム。ゲン婆ボケちゃってるんだ」
そんな子供の言葉に思わずクロムは笑ってしまった。
「あんたが噂の”しんぷさま”かい?」
男の低い声がした。そこに目を向けると、がたいのいいスキンヘッドの男と、ヒョロットしたチンピラ風の男がいた。
「ああ〜ゴンザ!」
子供達はスキンヘッドの男を知っているようだった。一人の子が、ゴンザの前に立ち、両手を腰にあて怒鳴った。
「何しに来たんだよ!また、悪い事しにきたのかよっ!ゲン婆に言いつけるぞ!」
「うっせーんだよ!ガキはひっこんでろ!!」
ゴンザの横に居たチンピラ風の男が、子供のえりを掴み後ろへ突き飛ばした。
「なにを!!」
クロムは子供に駆け寄った。突き飛ばされた子は、参拝用の壊れた椅子にあたり膝から血を流していた。その血を見て子供達がいっせいに泣き出し、クロムのそばに駆け寄った。
クロムはゴンザ達を睨みつけ、そっと腰の剣に手を置いた。
「おお〜こわっ。”しんぷさま”がそんな危ないもん振り回しちゃいけないよ〜。それに、今時そんな物役に立たないんだよ!」
そう言って、チンピラ風の男が銃を取り出した。
つづく