「…」
『追ってこい』
「追うさ、何処までだって…」
いつか出逢う日が来るその日まで、何処までも…何処までも追い続けてやる。
そして、この手で…必ず…っ。
だから…それまで待っていろ。
「…」
「――いつまで洗面台に居るつもりですか。早く来て下さい、食事が冷めてしまいます」
遠くからそう呼ぶ声が聞こえてきた。
相当苛ついているのかその声質は中々に不機嫌だった。
「ああ、分かった。ちょっと待ってろ」
俺は少し慌てるようにそう言って洗面所から離れ彼女の居る部屋へと歩き出した。
その歩いた時の衝撃からか後方からカランと歯ブラシが動く音が聞こえた。
一瞬その音がした方を見ると開け放たれた窓が目に入った。
「へぇ…」
空は輝かんばかりに青空だった。
…ああ、そうだな。
久し振りに散歩にでも行こうか―――。
終