私達の周りだけ、とても、重い空気になっていた―\r
淳が私の事をまだ想ってくれていると言う嬉しい気持ちや、彼女の、淳に対する重い執着心への恐怖・・・。一瞬にして、色んな気持ちが私の心の中を支配し始めていた。
「淳って、よく解んない。香里が好きなら、そんな子、捨てれば良いじゃん。」
茉莉子は、重い空気を払拭しようと、私の目を見て、私の心の中のもう一人の私に語り掛ける様に言った。
「それが出来る淳なら、悩まないし、香里と、とっくに寄りを戻してるでしょ?淳の性格じゃ、無理じゃ無いの?」
「あっちゃん、彼女の事好きなんだよ。彼女も、あっちゃんの事を必要としてる・・・。だから、私が入る隙なんて、もう無いんだよ・・・。」
本音とは違う事が、私の口を突いて出た。淳の事を忘れたい自分と、淳が自分の元に戻って来て欲しいと言うと自分が、また、心の中で喧嘩をしていた。
「何言ってんの?香里、まだ淳の事が好きなんでしょ?良い加減、素直になりなよ!だから、鈍感な淳も、そんな彼女を振り切れ無いんじゃない!!」
麗華は、立ち上がって、テーブルを叩きながら、私に言った。頭を何かで叩かれた気がした―\r
心も、頭も、全身がとてつも無く、痛かった。淳も、麗華も、茉莉子も、皆、私がこだわっている、あの日の事を知らない―\r
今にも、口から出そうになっていた。知らない男性に身体を汚されてしまった事―\r
いっそ、言ってしまった方が楽になれる気がした。プライドなのか、軽蔑される事が恐いのか、あの日から、年数を重ねる毎に、自分でも、解らなくなっていた―\r