私の名前は茜。
晋ノ介とは幼なじみの関係。
私には秘密がある。
人には絶対に言えない秘密。
それは…
物心がついた時から私は…
晋ノ介の心の声を全て聞き取ることが出来てしまっているということ…。
初めはみんなが聞こえているものかと思った。
でも、時間が経つにつれて…
子供ながらに、晋ノ介の心の声は私にしか聞こえていないのだと理解した。
私はいつしか晋ノ介に恋心を抱いていた。
晋ノ介は優しい。
ため息をつきながらも…いつも最後には私を許してくれた。
そんな寛大な晋ノ介だけど…
もし私に自分の心の声が筒抜けになっていると知ったら…
今までそれを黙っていたと知ったら…
かなりショックに違いないと思った。
だから私はそれを気付かれないように…。
晋ノ介に対して、わざといつも同じ態度で接することを心に決めた。
怒り気味で自分勝手でワガママを演じた。
これなら晋ノ介も私の微妙な表情の変化や態度から不信感を抱くことは無いだろうと思ったから。
いや…本当は違うかな。
晋ノ介に私の気持ちが悟られるのが怖かったのかも…。
そのおかげか、晋ノ介は私の事を『単純な女』と思いこんでいるようだ。
…私は焦っていた。
数日前、突然晋ノ介の心の声が聞こえなくなってしまった。
昔から当たり前のように聞こえていた晋ノ介の心の声が全く聞こえなくなった事で…
私は言い表せないような不安に襲われた。
晋ノ介の考えている事がもの凄く気になってしまう…。
でも。
私は思った。
これはもしかしたら神様がくれたチャンスなのかもしれない。
長い間、心の奥底にしまい込んでいた気持ちを伝えるチャンスなのかもしれない。
素直な私に変われるチャンスなのかもしれない…と。
私は晋ノ介を買い物に誘った。
いつもの通り、
ぶっきらぼうに…
怒りながら…
でもそれも…
これで最後かもしれない。
これからは、自分に素直になれるかもしれない。
伝えよう。
私の本当の気持ちを伝えよう。
ずっと
晋ノ介が好きだったよ
と…。
本編?へつづく