鑑別所での生活が始まった…
少年院に入ったことがある人間は、鑑別所では単独部屋に入って審判を待つ事が多い。
その理由は、初めて審判を待つ人間に不安を与えるかららしいが…
しかし、将太はすぐに集団部屋に移された。
何故なら、少年犯罪が増えてきて、単独部屋が足りない状態らしいからだ。
将太は一人になりたかった…
山崎との出会い…
今までの人生を振り返りたかった。
友達、仲間、先輩、後輩…
自分にとって今、誰が必要なのか…
そんなことしか考えられなかった。
そんな中、母親が面会にやって来た。
将太は会う気になれなかったが、会わざるをえなかった。
わざわざ遠い所から来てくれている母に顔も見せず帰らせるのには、気が引けたからだ。
母の顔を見た瞬間、将太は泣いた…。
人の目も気にせずに…泣いた。
白髪混じりの髪、いつの間にか縮んでしまった身長。
痩せ細った体…
自分のせいで苦労している母親の姿。
何を言われても仕方が無い…。
そんな将太を見ても母は
『ちゃんとご飯食べてるか?ちょっと痩せたんちゃう?』
その言葉を聞いて、また将太は泣いた。
自分の体は痩せ細って、背が縮むぐらいなのに…。
自分の事よりも息子を心配する母に申し訳なくて、何も言えなかった。
ただ、一言、面会が終わるまでに謝りたかった…しかし何も言えずに面会は終わってしまった。
面会が終わり、午後になると、差し入れでお金と帰る用に服が届いていた。
『帰れるわけ無いのに…こんな事までしてくれて…』
自分のやってしまった罪が母親をも苦しめ、家族を巻き込んでしまった。
申し訳ない気持ちでまた、いっぱいになった。
帰りを待ってくれる人がいる…
それがまた、将太の人生の立ち直りを助けて行くのだった。