うらめしそうに英彦を見ながらカウンターの前でアイスキャンディを食べてパソコンのモニタを見つめている弟のシンジにを見た。
「お前もちょっとくらい手伝え!パソコンばっかしやってないで!」
シンジはヒカルの方をちょっと見てまたパソコンのモニタに集中する。
その時居間の奥から声が聞こえた。
「どうした兄貴!」ヒカルは駆けつける。英彦はチクショーとかくそったれとかありとあらゆる悪態をついていた。普段温厚な英彦にしては珍しい。ヒカルはただ事ではないと直感した。
英彦はヒカルになだめられて少し落ち着きを取り戻して言った。「みんな聞いてくれ。先物取引で失敗した。貯金も根こそぎ持っていかれた。スマン俺のせいだ。」
ヒカルは激怒した。先物取引?失敗?貯金がなくなった?「何やってんだよバカ兄貴!」
「仕方がないだろ。儲かって調子に乗った時はおまえたちだって乾燥機やら車だって買ったじゃんか」逆ギレである。
ヒカルは激怒したふざけんな、ローンとかどうすんだよ!英彦に組み付く。ゴジラ対キングギドラいやセイウチ対トドか。建物全体が揺れていた。
そこに「いい加減にしなさい二人とも!」と英彦の妹ヒカルの姉のヒトミの声が聞こえた。
女優の黒木ヒトミに似ている。美人である。
本当に兄妹かと思われる。
ヒトミには高校一年生の娘がいる。明菜という娘は母親に似てとても可愛らしい。ヒカルは役所の男と不倫関係にあり、明菜も認知されている。いわゆる出戻りであった。
そこに明菜が帰ってきた。明菜は事情を説明されて、「なってしまったもんは仕方がないよ、何か考えた?」
英彦とヒカルは口ごもった。
「シンジ兄は何か考えた?」
シンジはすっかり食べてしまったアイスキャンディの棒でパソコンのモニタを指した。モニタには流線形のギャラクシーラリーと派手な文字が書かれていた。