3日前、町は完全に封鎖され、出入りは一切できなくなった。
隠れても逃げ切れないだろうとは分かっている。
それでも万が一にも見落とされないだろうかという、僅かな希望にすがる。
脈が速い。荒くなる息を必死に抑える。
ここへ逃げ込む途中に、処分された人たちを見た。
人とは思えないほど簡単に、たくさんの人たちが死んでいた。
地獄。
まさに地獄そのものだった。
カツン
足音。
大きく心臓が跳ねた。
悲鳴が出そうになる口を押さえ、必死に堪える。
身体が震える。
涙が浮かぶ。
気を失いそうになるくらいの緊張感。
死にたくない。
生きたい。
これが動物の本能だと痛いくらいに実感する。
カツン
近い。
嫌だ
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない
『みぃつけた』
『他の動物もそうでしょう。絶滅の危機にある動物は保護して増やしますが、増えすぎた動物や人にとって有害な動物は殺処分などで減らしています。
人間は増えすぎました。ですので調整しなければなりません。
皆様のご協力をお願い致します』
何度も何度も繰り返し流れている放送が、遠くで聞こえた気がした。