Push!Push! #15

ねむしゅー  2009-03-07投稿
閲覧数[455] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「遅いなぁ、もう練習終わりますよ〜」

入って来た男に、小泉さんが言った

でもその表情は笑顔だった

自主トレのときは道着は着ない
みんなジャージなど動きやすい格好をしている

その男もジャージに着替えながら

「ごめん〜忘れてた。ハハハ」

など喋りながらジャージに着替える

おれの方を見て

「あ、こないだ会った人やね〜、一緒に練習してるんや。慣れた?」

まだまだ…と答えようとした時

「でもしんどいし、痛いもんは痛いし、おれ痛いの嫌いでさぁ」

(今、質問したよな…)

おれが答えようとする前にまた喋りだした

「あと組み手だけですから。すぐ入ります?」

小泉さんが少し強めの口調で切り出す

じゃないと、この男の喋りに割って入れないのだろう

「ん〜、オッケー」

ミット練習でグロッキーになったおれの代わりに

その男が入る事になった

おれは時間係りを任された
2分1ラウンド

組手が始まった

小泉さんと、その男がペアになっていた

しっかり腰を落として基本通りの構えの小泉さん

ロン毛の男はというと、棒立ちで
手も下げている

多少の形は違えど、手のガードを上げ
腰はしっかり落とす

それが構えのはず…

(ふざけているのかな…)


2分しかない時間で
なかなか動かなかった小泉さんが

一気に距離を詰めた

腰が少し曲がった

ロン毛の男は素早く横にステップして離れる

華麗だった

そして早かった

小泉さんは追わない
また距離を開け基本の構えをしたまま
止まってしまった

そして顔が少し歪んでるように見えた

「入ったやろー。大丈夫?」

ロン毛の男が小泉さんに聞いている

なんの話かわからなかったが

「前蹴り…入りました」

(前蹴り!?)

考えられるのはさっき小泉さんが
前に詰めて横にステップしただけと思っていたあの瞬間…

前蹴りが腹部に入っていたのだ

おれには正直、蹴りを出した事すら
解らなかった

小泉さんが構え直して
またその男に詰めていった

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 ねむしゅー 」さんの小説

もっと見る

スポーツの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ