「…くっ!」
マギウスが抵抗しようとした瞬間、黒装束の人物の短剣が首筋を切り裂いた。
「がっ…」
首筋から血が噴き出ると、マギウスは目を大きく見開いてエリウスを睨みつけながら、机の上に倒れ込んだ。
「黒鷹、よくやった。下がってよいぞ」
「…宜しいのですか?」
黒鷹と呼ばれた黒装束の人物は小さく首を傾げた。
「よい。このような事をした男でも、わしの弟子には変わりない。師匠自身が始末をつけるのが常道じゃよ」
「分かりました…。それでは」
黒鷹は小さく頷くと、ドアの外にある闇へと消えていった。
「…馬鹿者が…。お主は将来、必ずやこのカイストランドを大きく発展させる事ができると…」
エリウスはそこまで言って、一つ大きく息を吐いた。その目にはうっすらと涙がにじんでいる。
「馬鹿者が…」
もう一度同じ言葉を呟いて、絶命したマギウスの髪を撫でると、エリウスはマギウスの使っていたグラスに自らのグラスを当てた。
グラスとグラスが当たる涼やかな音を聞きながら、彼は無言で残っていたワインを飲み干した。
剣と剣の擦れる音が、闇夜に響いていた。
「はっ!」
ロイは状態を低くしながら素早い動作でユミナの懐に飛び込み、剣を薙ぎ払った。