アメリカ ラングレイ=CIA 本部に情報が、もたらされた。
イラク現地に20年前から、スリーパー(潜入情報員)として潜らせておいたイラク人からだった。
このスリーパーは、イラク独裁政権の中枢にある者で、これまで、CIAの協力者として活動し、彼がもたらす情報価値にも、信頼があった。
情報は現地CIAスタッフから、本国に伝えられた。
その内容は、大量破壊兵器がすでに完成し、地下施設に配備されているというものである。
これには、具体的な絵図面や映像が、添付されていた。
しかし、それはCIAエージェントが、施設に潜入し直接、目で確かめたものではなかった。
協力者を使うには、鉄則がある。
つまり協力者が逆間者、二重スパイとして、こちらに偽情報をもたらそうとしていないかを、警戒することである。
この情報を受けた現地CIA要員は、自らの功績を意識するあまり、この、思わぬお宝情報に飛び付いてしまった。
もっとも、現地の下級エージェントはあくまで、そういう話があったと、報告するに過ぎない役割であり、その検証は、上の判断によるものであった。