思い出をトッカータにのせて(第1章1)

柊梛菜  2009-03-07投稿
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《憂うつだ》

こんなに憂うつな日はあっただろうか。いや、ないだろう。(反語)

そんなことを考えながら、私(矢田優子)は校門をくぐった。

本鈴の5分前を告げる予鈴が鳴っている。

この学園に入学してから6回目の4月。
…そして最後の4月…。
新年度の登校初日。

まだ幼げな面影を残したままだった6年前の入学式の日でさえ、もっと希望に満ちていた。

《みんな、これ見たらなんて言うかな…》

私は前髪をいじりながら歩き続けた。

やたらと広い玄関で春休み中に新調した白い上履きに足をとおす…。
どうやら私が最後らしい。他のクラスメイトの靴箱には全て、黒く、鈍く光を反射する革靴がはいっている。

玄関から中央棟を通り、高校棟へと続く渡り廊下を進む。

3階の突き当たりの教室。新年度の引っ越し前の私たちの教室…。

本鈴が鳴るまであとわずか。ギリギリセーフだ。

ドアを開け…


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