ニアロは久々にしたフォルドとの会話を楽しみながらさらに質問しようとしたが、その瞬間
「・・・ですから」
フォルドの頭には銃が突き付けられていた。
「何なのですかその言葉遣いは」
銃の持ち主は勿論メアニスで、いつでも引き金を引けるよう準備している。
急なことに驚きながら、ニアロは慌ててメアニスに問う。
「メア、メアちゃん、どうだったの?事故?飛び込み自殺?」
出来るかぎり自然を装おうとするが、かえっておかしな事を言っている。だがそれはさほど問題ではないようで、メアニスは恭しく一礼した。
「いえ、乗客の一人が出発を遅くしろと騒いでいたのでだまらしておきました」
「撃ったの?」
「経費として落ちそうにないので撃ちませんでした」
報告しながら席につく。
同時に列車は再び動きだし汽笛を高らかに鳴らす。
(俺を殺すのは経費て落ちるのか?)
メアニスの登場により足を蹴られることから解放されたフォルドであったが、新たに疑問が出来てしまいそれはそれで悩ましい。
「じゃあ、経費で落としてあげるなら撃ってきて」
「残念ですが、暫くは大人しくしていると思いますので撃ちに行けません」
なんとも残酷な会話を繰り広げる二人にあきれたのかフォルドは悩む事をやめ、窓から外を見る。
外の景色は噂に聞いていたほど賑やかな区間では無く、物静かな空気に満ちている。
その中で唯一彼の資格を刺激したのはせいぜいこちらへ向かってくる人程度である。
(・・・あ?)
そう、人がこちらへ向かっている。
問題は向かっている事だけでなくらその方法である。
その人物は二輪の乗り物とともに空中に踊り出ており、現在進行系でこちらへ飛来していた。
(まずい)
「伏せろ」
「えっ?」
瞬間的に声を上げながらフォルドはニアロの体を覆うように盾となり、守られた彼女は目を丸くしながらほうけた一言を漏らす。
そして
パリンッ
つい爽快感が沸いてしまう音と共に窓ガラスを打ち破り、その人物は車内へと転がり込んできた。