感覚が麻痺しているせいか、さほど悪いことをしているという気はなかった。むしろ、これだけ不幸な人間だから、少しくらい金を分け与えてもらっても罰は当たらないよな、という気持ちだった。
さっそく一階の窓を見て回る。もしも鍵をかけ忘れているところがあれば、そこから侵入してやろうと思ったのだ。
しかし、現実はそこまで甘くない。
ここも開いてない……ここも、ここも……。一周ぐるりと回ってみたがどこも開いている気配がない。
やはり、そう簡単にはいかないものか。諦めてため息をつきかけたその時、小さな出窓が一つ、鍵をかけていないどころか数センチ開いた状態であるのを発見した。
この寒い夜に、窓を開けたままにしておくとは、この家の住人は一体どんな神経の持ち主なんだ。不審に思ったが、今はその窓が「さあ、早くおいでよ」と手招きしているようにしか見えない。
ここまで歓迎されているんだ。入るしかないだろう。窓に近寄り、慎重に中を覗いた。