一安はずっと、やり直したいと言い続けていた。
私は、ずっと断り続けた。
次第に一安からの電話も減り始めた。
中学三年になった頃には、もう電話が来なくなった。
一安は学校にも来ていなかった。
一安は世間でいう反抗期を迎え、どんどん不良の方向へ進んでいた。
私と一安は逢うことも、話すことも無くなった。
でも、一安はまだ私を好きなんだと知らせる出来事が、時々起きた。
ある朝私が学校に行くと、私のクラスの下駄箱横の窓にカラースプレーで【ぁゆ命】と書いてあった。
私は、恥ずかしすぎて見て見ぬふりをして急いでその場を去った。
一安に彼女が出来た時も、休み時間一安の彼女が私の居る教室の前まで来た。
「なんで、一安があんたの事好きなのかわかんない。ブス」
そんな事を激怒しながら叫んで逃げて行った。
有難迷惑とは正にこういう事をいうのだと思った。
それから、中学を卒業するまで一安と逢うことはなかった。
私は近くの定時制の高校に行く事になった。
親には合格祝いに携帯を買ってもらった。
もう、一安と逢う事はないだろう。
少し寂しい気持ちと同時に、あんなに私を想ってくれた事に感謝した。
高校生になり、バイトも始めた。
その頃携帯に、知らない番号からの着信が入っていた。
「もしもし?」
誰だかわからないが、男性の声。
「誰?」
私は、誰なのかと考えながら質問した。
相手の男性は私の名前を呼んだ。
知ってる人?私はさらに考えた。