館山サエは近所の定時制高校に通う少女
(ふぃ〜・・終わった)
階段を降りながら小さく息をつく
普通に見ればただの高校生なのだが、彼女は少し違っていた
手に持っているのは白い杖、そして執拗なほどに手すりを持って階段を降りる・・
そう・・彼女は目が見えていないのだ
目は開いているが、彼女の視界には景色は映らずに暗闇しか見えない、生まれつきの病気のため、彼女自身はさほど気にしてはいなかったが、少しずつだがこの現実に嫌気がさしていたことも事実だ
自分とある程度まで仲良くなると、それっきり関係を断たれてしまう・・、やはり自分がこんな状態だからか、もの珍しさなのか人々は彼女に寄ってくる
(本当に私の事を思っている友達が欲しい・・)
そう常々思ってるのだが、簡単には行かないものだった
いつしか、友情関係などである程度まで関係を持つと彼女は自分から距離を置くようになる
自分自身を傷つけないため、そう自己防衛的になってしまっていた
(そんなに珍しいのかな・・?杖ついて歩いてるのって)
目が見えない分、他の感覚は鋭くなり、声を聞いただけで人物が分かり、手で触るだけでモノが分かったりしていた・・
(・・もし目が見えてたらなぁ)
いつもそう考えるが、無駄なだけですぐに考えるのをやめる
かと言って、そこまで自分を追い込むような事はしない・・
ふと足を止めて少しだけ顔を上げた
(この闇が晴れたらどれだけ楽になるんだろうか?1日・・いや、数時間だけでもいい・・、この目に知らない事を焼き付けてみたい・・)
おそらく叶わない事を思いながらも彼女は再び歩み始めた・・